親の様子がいつもと違う、何かおかしいと感じたことはありませんか?
物忘れが多くなった、性格が変わった、日常生活に支障が出始めた。 これらは、実は認知症の初期症状かもしれません。
でも、認知症と聞いてすぐに絶望する必要はありません。 早期発見・早期対応することで、親も自分も穏やかに過ごすことができるのです。
この記事では、認知症の初期症状と確認方法、そして早期発見・早期対応のメリットについてお伝えします。 大切な親との日々を、できるだけ長く、充実したものにするためのヒントが見つかるはずです。
一緒に認知症について学んでいきましょう。
物忘れが気になる
親が同じ質問や話を何度もするようになった、大切なものをなくしたり置き忘れたりする頻度が増えた、 約束や予定を忘れてしまうことが多くなった。 こんな変化に気づいたら、認知症の初期症状かもしれません。
ただし、誰にでも物忘れはあるもの。 加齢に伴うものなのか、認知症によるものなのか、見極めが重要です。
加齢に伴う物忘れの特徴は以下の通りです。
- 体験の一部を忘れる(例:映画のタイトルは覚えているが、出演者名を忘れる)
- ヒントを与えられると思い出せる
- 物忘れの自覚がある
- 日常生活への支障はない
一方、認知症による物忘れの特徴は次のようなものです。
- 体験そのものを忘れる(例:映画を見たこと自体を忘れる)
- ヒントを与えられても思い出せない
- 物忘れの自覚がない、または乏しい
- 日常生活に支障をきたす
また、以下のような点にも注目しましょう。
- 物忘れの頻度が増えている
- 症状が徐々に悪化している
- 他の認知症症状(性格の変化、判断力の低下など)も見られる
物忘れが気になる場合は、まずは専門医に相談することが大切です。 医師が認知機能テストや画像検査などを行い、総合的に判断します。 物忘れが認知症によるものであれば、早期発見・早期対応が可能になります。 一方、加齢に伴うものと診断されれば、安心して日常生活を送れるでしょう。
性格の変化に戸惑う
認知症による性格の変化は、本人も周囲も戸惑うものです。 怒りっぽくなる、感情の起伏が激しくなる、無気力になる、常識から外れた行動をとるなど、 今までとは違う親の姿に、子供は困惑するでしょう。 しかし、これらの変化が認知症によるものなのか、そうでないのかを見極めることが重要です。
性格の変化が認知症によるものかどうかを判断するポイントは以下の通りです。
- 変化が急激に現れた
- 以前からの性格とは大きく異なる
- 変化が長期間続いている
- 他の認知症症状(記憶障害、見当識障害など)も見られる
- ストレスや環境の変化では説明がつかない
一方、性格の変化が一時的で、ストレスや環境の変化によるものであれば、 状況が改善されれば元の性格に戻ることが多いです。 また、もともとの性格が強調されただけで、根本的な変化ではない場合もあります。
性格の変化が認知症によるものだと判断された場合、子供ができる対応は以下の通りです。
- 認知症について正しい知識を持つ
- 困惑せず、冷静に受け止める
- 否定せず、優しく接する
- 環境を整え、刺激を減らす
- 自己決定を尊重する
- 同じことを何度も説明する
- 一緒に楽しめることを見つける
何より大切なのは、変化した性格は病気の症状であると理解し、 親の尊厳を守りながら接することです。
例えば、怒りっぽくなった親に対して、 「どうしてそんなことを言うの?」と反論するのではなく、 「そう思うのよね。でも私は〇〇だと思うの」と優しく自分の意見を伝えるなど、 柔軟な対応を心がけましょう。
また、親の性格変化に対応することは、子供にとって大きなストレスになります。 周囲の人々に相談したり、サポートを求めたりすることを躊躇ってはいけません。 家族や友人、医療・介護の専門家など、信頼できる人々に支えられながら、 親との新しい関係性を築いていくことが大切なのです。
日常生活に支障が出始める
親が今まで問題なくこなしていた家事ができなくなってきたら要注意です。 料理や掃除などがおろそかになる、同じ料理ばかり作るようになる、 家事に異常に時間がかかるようになるなどの変化は、認知症の可能性を示唆しています。
また、服の着方がおかしい、ボタンの掛け違いなどが目立つようになるのも同様です。 子どもや孫との会話についていけなくなるのは、認知機能の低下を表しているのかもしれません。
ただし、これらの変化が認知症によるものかどうかを判断するには、他の要因も考慮する必要があります。 日常生活に支障が出る原因として、次のようなものが考えられます。
- 身体的な病気や障害 ・感覚器官(視覚、聴覚など)の低下
- 服薬の副作用 ・うつ病などの精神的な問題
- 家族関係やサポート体制の変化
日常生活に支障が出始めた場合、まずは家族で話し合い、変化の原因を探ることが大切です。 その上で、かかりつけ医や専門医に相談し、適切な検査を受けることをおすすめします。 医師が総合的に判断し、認知症の可能性が高いと診断した場合は、 早期の対応が求められます。
認知症と診断された場合、家族ができる対応としては次のようなことが挙げられます。
- 本人の残存能力を活かし、できることは自分で行ってもらう
- 日常生活のリズムを整え、混乱を防ぐ
- 危険な場所や物を取り除き、安全な環境を整える
- 介護サービスや福祉用具を活用し、負担を軽減する
- 本人の尊厳を守り、自己決定を尊重する
日常生活に支障が出始めた親を支えることは、家族にとって大きな負担となります。 しかし、適切な対応と周囲のサポートにより、本人も家族も穏やかに過ごすことができます。
認知症の進行に合わせて、柔軟に対応方法を変えていくことが求められます。 家族で協力し合い、社会資源を上手に活用しながら、 これからの日々を大切に紡いでいきましょう。
認知症かどうかを確認するには
親の様子に変化を感じたら、まずはかかりつけ医や認知症専門医に相談することが大切です。 医師から認知機能のテスト(MMSE、HDS-Rなど)を受けるよう勧められるでしょう。
これらのテストで認知症の可能性が高いと判定された場合、 MRIやPETなどの画像検査で脳の状態を詳しく調べることになります。 検査の結果、認知症と診断されることもありますが、正しい診断を受けることが適切な治療とケアに繋がります。
親が医者に行きたがらない時は
親が医者に行きたがらない場合、まずは親の気持ちに寄り添うことから始めましょう。 医者に行くことへの不安や恐れを感じているのかもしれません。 そんな時は、優しく話を聞き、不安を和らげるように努めることが大切です。
また、医者に行くメリットを伝えることも効果的です。
例えば、「早期発見・早期治療で症状の進行を遅らせることができるよ」 「適切な診断を受けることで、安心して生活できるようになるよ」など、 前向きな言葉で医療機関を受診する意義を説明しましょう。
それでも親が医者に行くことを拒否する場合は、 かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみるのも一つの方法です。 医療・介護の専門家から、説得の仕方やアプローチ方法について助言をもらえるかもしれません。
あくまでも本人の意思を尊重しながら、 焦らず、粘り強く働きかけ、信頼関係を築いていきましょう。 家族の支えがあれば、親も少しずつ医者に行く気持ちになれるはずです。
正しい診断なくして、適切な治療やケアは始まりません。 親の気持ちに寄り添いながら、医療機関につなげていくことが、 家族にできる最大のサポートになります。
早期発見・早期対応のメリット
認知症の早期発見・早期対応には大きなメリットがあります。 まず、薬物療法や認知症リハビリを始めることで、症状の進行を遅らせることができます。
また、本人の意思を尊重した財産管理や医療・介護の選択など、将来に向けた準備を行うことができます。
家族も認知症について学び、適切な対応方法を身につけることで、本人との関わり方に自信を持てるようになるでしょう。 早期発見・早期対応は、本人と家族の双方にとって、より良い未来を築くための第一歩なのです。
もしも認知症の診断を受けても、決して絶望する必要はありません。 適切な治療とケア、そして何より家族の理解とサポートがあれば、 認知症になっても自分らしく、充実した人生を送ることができるのです。
早期発見・早期対応は、そのための第一歩。 希望を持って、前を向いて歩んでいきましょう。
認知症の予防策 – 今日からできること
ここまで読んで、「まだうちの親は認知症ではなさそうだ」と安心されたあなた。 でも、ちょっと待ってください。 認知症は、誰にでも起こり得る脳の病気です。 今は大丈夫でも、10年後、20年後のことは分かりません。
だからこそ、今から認知症予防に取り組むことが大切なのです。 認知症の予防は、特別なことではありません。
日常の些細な習慣の積み重ねが、将来の認知症リスクを大きく左右します。
食事
野菜、果物、全粒穀物、豆類、ナッツ、魚を中心とした食事は、 脳の健康維持に役立ちます。 一方で、加工食品や砂糖の過剰摂取は控えめにしましょう。 家族で一緒に食事を楽しみ、健康的な食習慣を作っていくことが重要です。
運動
次に、運動の習慣づけも欠かせません。 ウォーキングやストレッチなど、適度な運動は脳の血流を促進し、 認知機能の維持に役立ちます。 親の体力や好みに合わせて、無理のない範囲で運動を取り入れましょう。
家族で一緒に運動するのも良いでしょう。
社会参加
また、社会参加や生涯学習も、認知症予防に効果的だと考えられています。 趣味の活動や地域のイベントに参加することで、脳を刺激し、 社会とのつながりを維持することができます。
親の興味や関心に合わせて、活動の機会を一緒に探してみてはいかがでしょうか。
健康管理
睡眠や口腔ケアなど、日常的な健康管理も忘れてはなりません。 十分な睡眠は脳の機能を整え、口腔ケアは肺炎予防にもつながります。 親の生活リズムを整え、きめ細やかなケアを心がけましょう。
最後に
何より大切なのは、家族との絆を深めることです。 会話を楽しみ、思い出を共有し、互いに支え合う関係を築きましょう。 親の尊厳を大切にし、その人らしさを認めることが、 精神的な健康維持につながります。
認知症予防は、特別なことではなく、日常の積み重ねです。 家族みんなで取り組むことで、親の健康を守り、 認知症になっても穏やかに暮らせる土壌を作ることができるでしょう。 今日から、一歩ずつ始めてみませんか。